JYPO会員の皆様、OB/OGの先生方、賛助会員の皆様、御支援いただいている皆様
平素より大変お世話になっております。
JYPO理事をつとめます、醍醐病院所属の福島と申します。
少し前のことにはなりますが、九州大学主幹で開催され、JYPOのOBOG・現役メンバーも数多く参加した第23回日韓若手精神科医による合同研修会に、9月21日-22日に参加してまいりましたので、以下報告いたします。
「第23回日韓若手精神科医による合同研修会に参加して」
9月21日-22日の2日間、第23回日韓若手精神科医による合同研修会に参加しました。加藤隆弘先生の引きこもりに関する講演、日韓の若手精神科医の研修制度やワークライフバランスについてのディスカッション、ポスターセッション、コロナを通しての生活の変化についてのディスカッションなど、盛りだくさんの内容でした。
その中でも、2日目に行われた、SeonCheol Park先生の北朝鮮の精神科医療に関する講演は、とても興味深かったです。北朝鮮では、ソビエトで用いられた精神医学の論理が対象にしている一部の疾患への治療はある程度行われているものの、薬物は旧来のものが中心で、医療体制も不十分なものが多いとのことでした。(精神科の代表的な疾患であるうつ病についても治療体制は十分とは言い難く、「北朝鮮は地上の楽園だからうつ病はない。」といわれている、とのことでした。)
黒木俊秀先生の、ハンス・アスペルガーとレオ・カナーによる自閉症概念における重要な論文についての講演も、とても興味深いものでした。ヨーロッパとアメリカという遠く離れた2つの地で、この2人の論文が、なぜほぼ同時期に発表されたのか?という疑問について、ゲオルク・フランクルという医師とこの2人の関係を軸にお話しされました。
アスペルガーは近年、ナチズムに対する協力をしたのではないか。と疑われています。その一方、ユダヤ人への迫害のためにアメリカへ亡命したかつての同僚であった医師のフランクルとやり取りをしていました。
アスペルガーが単なるナチズムの協力者であったなら、フランクルは彼とやり取りをしなかったはずだ。アスペルガーは単なるナチズムの協力者ではなかった。私はそう信じたい。黒木先生がそうおっしゃっていたことが非常に印象的でした。
現在の日本と第二次世界大戦中のドイツや北朝鮮はまったく異なる環境です。しかし、様々な社会的な制約の中で医療従事者が治療を行っていることは共通しています。たとえば北朝鮮の中にも、非常に限られた医療資源の中で、真摯に患者さんの治療にあたる医療従事者が、他国と同様にいるのだと思います。自分もそれに学ぶところがあるのではないか、というようにも感じました。
そして、日中のみならず、夜の懇親会も(もちろん!)印象深いものでした。
懇親会の中で、以前からの参加者の方が一人一人前に出られて、この会で今まで経験したこと、起きたことについてスピーチをされていました。それが、この会の歴史、この会が参加者の方々に与えてきた影響を表していて、はじめての参加者である私にもそれは伝わってきました。
また、韓国の参加者と日本の参加者が互いにグラスを持ち腕と腕を回し合い、一緒に一気にお酒を飲むをする光景が何回も見られました。(韓国の飲み会での風習なのだそうです。)その光景を見ることが、日韓の精神科医同士の交流が、この会の中で、長い間続いてきたことを象徴するものと感じました。
これらのことを含めた懇親会の雰囲気自体が、この会の意義深さ、楽しさ、歴史を示しているように、私には思えました。そのためもあり、3次会まで私も懇親会に参加し、楽しい時間を過ごしました。(一部の方は4次会まで行かれたそうです!)
最後になりましたが、開催のために尽力してくださり、この度このような機会を与えて下さった事務局の先生方、ご指導下さった両国の先生方に心から感謝いたします。
以上が研修会の内容報告です。
コロナ禍を経て、合同研修会は4年ぶりの開催となります。
会の創設に関わられた西園昌久先生とMin Byung Gun先生は残念ながらご逝去されましたが、お二人の深い絆が築きあげてきた本研修会が、今後も末永く、存続・発展していくことを願います。
最後に、日韓研修会事務局の鈴木宗幸先生をはじめとして、福岡で心暖かく迎えて下さった先生方に深く感謝を申し上げます。
この貴重な経験を糧に、今後の精神科臨床において精進していきたく存じ上げます。今後ともよろしくお願い申し上げます。
—
醍醐病院
福島 弘之